契約書でトラブルを避ける!必ず入れるべき条項TOP5

その契約書、地雷が埋まっています

「契約書なんて形式的なもの」 「信頼関係があれば大丈夫」 「標準的な契約書だから安心」

こんな考えで契約書をろくに読まずにハンコを押して、数百万円の損失を出した企業を何度も見てきました。

Web制作の契約トラブルの9割は契約書で防げます。この記事では、絶対に外せない5つの条項と、危険な契約書の見分け方を解説します。

必須条項1:作業範囲と仕様の明確化

曖昧な表現が招く悲劇

【危険な表現】
× 「ホームページを制作する」
× 「必要な機能を実装する」
× 「適切にデザインする」
× 「SEO対策を行う」

【明確な表現】
○ 「トップページ含む10ページを制作」
○ 「仕様書記載の5機能を実装」
○ 「デザイン案3案から1案を選択」
○ 「title/description/h1タグを最適化」

作業範囲チェックリスト

項目明記すべき内容トラブル例
ページ数具体的な数と内容「必要なだけ」で無限増殖
デザイン提案数と修正回数「納得いくまで」で100回修正
機能具体的な機能リスト「一般的な機能」の解釈相違
コンテンツ誰が用意するか「御社で」「いや貴社で」
テスト範囲と回数バグが残って責任なすり合い
納品物ファイル形式とデータソースコードもらえない

実際のトラブル事例

【ケース1:スマホ対応の解釈違い】
契約書: 「レスポンシブ対応」
発注者の認識: 全ページスマホ最適化
制作会社の認識: CSSで最低限表示

結果: 追加費用80万円発生

【ケース2:ページ数の認識違い】
契約書: 「コーポレートサイト制作」
発注者の認識: 必要なページ全て
制作会社の認識: 10ページまで

結果: 20ページ追加で200万円請求

必須条項2:納期と遅延ペナルティ

納期に関する必須記載事項

【最低限必要な記載】
・着手日
・各工程の締切
・最終納期
・検収期間
・遅延時のペナルティ
・発注者都合の遅延時の扱い

【理想的な記載例】
「乙は2025年3月31日までに納品する。
 遅延した場合、1日あたり契約金額の0.5%を
 違約金として甲に支払う。
 ただし、甲の責に帰すべき事由による場合はこの限りでない」

工程別マイルストーン設定

工程期限設定例遅延リスクペナルティ例
要件定義契約から2週間警告のみ
デザイン提出1ヶ月以内日額0.1%
初稿提出2ヶ月以内日額0.3%
最終納品3ヶ月以内最高日額0.5%

遅延を防ぐ条項

【進捗報告義務】
「乙は週1回、作業進捗を書面で報告する」

【遅延予測時の通知義務】
「遅延の恐れがある場合、
 判明次第直ちに甲に通知し、
 対策を協議する」

【部分納品】
「工程ごとに部分納品し、
 都度検収を行う」

必須条項3:費用と支払い条件

支払いトラブルを防ぐ条項

【危険な支払い条件】
× 着手金100%
→ 納品されないリスク

× 納品後100%
→ 制作会社が受けないor手抜き

× 「追加費用は都度協議」
→ 青天井になる

【安全な支払い条件】
○ 着手金30%、中間30%、納品後40%
○ 追加費用は事前見積もり必須
○ 上限金額の設定

追加費用の明確化

追加費用項目条件料金設定例上限設定
仕様変更要件定義後工数×単価契約金額の30%まで
追加ページ10P超過分10万円/P50ページまで
追加修正3回超過分5万円/回10回まで
緊急対応営業時間外通常の1.5倍月50万円まで

費用に関する保護条項

【見積もり超過の防止】
「追加費用が発生する場合、
 事前に書面で見積もりを提示し、
 甲の承認を得なければならない」

【支払い遅延ペナルティ】
「支払いが遅延した場合、
 年14.6%の遅延損害金を支払う」

【着手金の返還】
「乙の責により契約解除となった場合、
 着手金を全額返還する」

必須条項4:知的財産権と著作権

著作権トラブルの実例

【実際にあった最悪のケース】

状況: 200万円でサイト制作
契約書: 著作権の記載なし
1年後: リニューアルしようとしたら...

制作会社の主張:
「著作権は弊社にあります。
 使用権のみ許諾しています。
 改変には別途100万円必要です」

結果:
・修正のたびに費用請求
・他社での改修不可
・最終的に500万円で買い取り

著作権に関する3パターン

パターン内容メリットデメリット適用ケース
完全譲渡全ての権利を発注者へ自由に使える費用が高い重要サイト
一部譲渡納品物のみ譲渡バランス良い素材は使えない一般的
使用許諾使用権のみ費用が安い制限多い予算重視

必須の著作権条項

【理想的な条文例】

「本契約に基づき制作された成果物の著作権
(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)は、
検収完了かつ対価の完済をもって、
乙から甲に移転する。

ただし、第三者の著作物及び
乙が従前から保有していた著作物は除く。

乙は甲に対し、著作者人格権を行使しない。」

必須条項5:契約解除と損害賠償

解除条項の重要性

【解除できない契約の恐怖】

契約書に解除条項なし
↓
制作会社が音信不通
↓
解除できない
↓
他社に発注できない
↓
プロジェクト凍結
↓
機会損失1000万円

解除事由の明記

解除事由発注者側制作会社側違約金
納期遅延14日以上-契約金額の20%
仕様違反重大な相違-契約金額の30%
支払い遅延-30日以上契約金額の10%
倒産・破産即時解除即時解除なし
信頼関係破壊協議の上協議の上個別協議

損害賠償の上限設定

【バランスの取れた条項例】

「本契約に関して生じた損害賠償責任は、
 債務不履行、不法行為その他請求原因の如何を問わず、
 契約金額を上限とする。

 ただし、故意または重大な過失による場合は
 この限りではない。」

【注意点】
・上限なしは制作会社が受けない
・低すぎると抑止力にならない
・契約金額の100-200%が相場

危険な契約書の見分け方

レッドフラグ集

【こんな契約書は危険】

・全部で1ページしかない
・「一般的な」「適切な」が多用
・制作会社の責任制限ばかり
・解除条項がない
・著作権の記載がない
・「協議の上決定」ばかり
・専門用語だらけで理解不能
・一方的に不利な内容

契約書チェックリスト

【契約前の最終確認】

基本事項:
・契約当事者は正しいか
・契約日と納期は明確か
・契約金額と支払い条件は明確か

作業内容:
・作業範囲は具体的か
・納品物は明確か
・検収条件は適正か

リスク管理:
・遅延ペナルティはあるか
・追加費用の扱いは明確か
・解除条項は双方公平か
・損害賠償は適正か

権利関係:
・著作権の帰属は明確か
・秘密保持条項はあるか
・個人情報保護はあるか

契約書修正の交渉術

修正要求の伝え方

【効果的な修正依頼例】

NG: 「この契約書、ちょっと不利じゃない?」

OK: 「契約書を確認させていただきました。
     以下3点について修正をお願いできますでしょうか。

     1. 著作権について
     現在:記載なし
     修正案:納品後は弊社に帰属

     2. 支払い条件について
     現在:着手金100%
     修正案:3分割払い

     3. 遅延ペナルティについて
     現在:記載なし
     修正案:1日0.3%の違約金

     他社様との契約でも同様の条件で
     お願いしており、ご理解いただければ幸いです」

まとめ:契約書は最強の保険

契約書の本質

契約書は、
・トラブルを防ぐ「予防薬」
・問題が起きた時の「解決策」
・お互いを守る「保険」

面倒でも、必ず:
✓ 全文を読む
✓ 不明点は質問する
✓ 不利な条項は交渉する
✓ 合意内容を文書化する
✓ 契約書は大切に保管する

結論:良い契約書が良いプロジェクトを作る

契約書を軽視すると、必ず後悔します。逆に、しっかりした契約書があれば、お互いに安心してプロジェクトを進められます。

この記事の5つの必須条項を確認し、危険な契約書を見抜き、必要なら修正を要求する。それが、Web制作を成功させる第一歩です。

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