Web制作の見積もりを読み解く|隠れコスト完全ガイド
見積もりの「一式」に隠された追加費用の罠
「ホームページ制作一式 100万円」
この見積もりを受け取って安心していませんか?実は、プロジェクト終了時には150万円〜200万円になることが珍しくありません。
1. Web制作費用の相場と内訳
規模別の適正価格帯
| サイト規模 | ページ数 | 価格帯 | 制作期間 | 含まれる機能 |
|---|---|---|---|---|
| 名刺代わり | 5P以下 | 30-80万円 | 1-2ヶ月 | 基本情報のみ |
| 企業サイト | 10-20P | 80-200万円 | 2-3ヶ月 | お問い合わせ、ブログ |
| サービスサイト | 20-50P | 200-500万円 | 3-4ヶ月 | 会員機能、DB連携 |
| ECサイト | 50P以上 | 300-1000万円 | 4-6ヶ月 | 決済、在庫管理 |
| 大規模ポータル | 100P以上 | 1000万円〜 | 6ヶ月〜 | フル機能 |
工数の現実的な計算
【10ページの企業サイトの場合】
ディレクション: 10人日 × 5万円 = 50万円
デザイン: 15人日 × 4万円 = 60万円
コーディング: 10人日 × 3.5万円 = 35万円
CMS構築: 5人日 × 4万円 = 20万円
テスト・修正: 5人日 × 3.5万円 = 17.5万円
─────────────────────
合計: 182.5万円(利益率20%込み)
これより極端に安い場合、何かが省略されています。
2. 追加費用が発生する15の落とし穴
よくある追加費用トラップ
| 項目 | 見積もり時の表記 | 実際の追加費用 | 回避方法 |
|---|---|---|---|
| 修正回数超過 | 「修正2回まで」 | 1回3-5万円 | 5回以上で契約 |
| ページ追加 | 「10ページ」 | 1P追加5-10万円 | 余裕を持った枚数 |
| 画像加工 | 「支給素材使用」 | 1枚5千円〜 | 加工込みで依頼 |
| 文章作成 | 「原稿支給」 | 1P 2-3万円 | ライティング込み |
| SSL設定 | 記載なし | 3-5万円 | 必須項目として明記 |
| スマホ対応 | 「レスポンシブ」 | 全体の30-50% | 対応範囲を確認 |
| ブラウザ対応 | 「主要ブラウザ」 | 1種類3万円〜 | 対象を明記 |
| サーバー設定 | 「納品のみ」 | 5-10万円 | 公開まで含む |
| リダイレクト設定 | 記載なし | 3-5万円 | リニューアル時必須 |
| アクセス解析設定 | 記載なし | 3-5万円 | GA4設定含む |
| フォーム機能 | 「お問い合わせ」 | 複雑なもの10万円〜 | 項目数を確認 |
| SEO対策 | 「基本対策」 | 本格対策20万円〜 | 具体的内容を確認 |
| マニュアル作成 | 記載なし | 5-10万円 | 納品物に含める |
| 研修費用 | 記載なし | 1回3-5万円 | 回数を決める |
| 著作権譲渡 | 記載なし | 全体の10-20% | 最初から含める |
3. 契約形態による総額の違い
買い切り vs 月額リース比較
| 項目 | 買い切り | 月額リース | 3年総額の差 |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 200万円 | 30万円 | -170万円 |
| 月額費用 | 1万円(保守) | 5万円 | +144万円 |
| 3年間合計 | 236万円 | 210万円 | -26万円 |
| 所有権 | 発注者 | 制作会社 | - |
| 解約 | 自由 | 違約金発生 | - |
| カスタマイズ | 自由 | 制限あり | - |
リース契約の恐ろしい罠
⚠️ リース契約の危険な条項
❌ 途中解約時は残額一括払い
❌ 5年契約で総額500万円(月8.3万円)
❌ 解約するとサイトが消える
❌ データの引き渡し不可
❌ 他社での修正禁止
実例: 月額3万円×5年契約 = 180万円のリースで、30万円相当のサイトを作られた事例多数。
4. 著作権と納品物の所有権問題
誰のものになるか明確にすべき8項目
| 納品物 | 一般的な帰属 | あるべき姿 | 確認方法 |
|---|---|---|---|
| HTMLソース | 発注者 | 発注者 | 契約書に明記 |
| デザインデータ | 制作会社 | 発注者(要交渉) | 追加費用の可能性 |
| 写真撮影データ | カメラマン | 使用権購入 | 利用範囲を確認 |
| イラスト | イラストレーター | 買い取りor使用権 | 二次利用の可否 |
| システム | 開発会社 | ライセンス購入 | ソースコード開示 |
| フォント | フォント会社 | 商用ライセンス | Web用ライセンス |
| ロゴデータ | 発注者 | 発注者 | AI/EPSで納品 |
| ドメイン名 | 発注者名義必須 | 発注者 | Whois確認 |
データ納品で確認すべきこと
✅ 納品物チェックリスト
・HTMLファイル一式
・CSSファイル一式
・JavaScriptファイル
・画像ファイル(元データ含む)
・デザインカンプ(PSD/Figma/XD)
・フォントファイル or 指定
・サーバー設定情報
・CMS管理画面情報
・FTPアクセス情報
・更新マニュアル
・サイトマップ(Excel)
・ワイヤーフレーム
・仕様書
5. 制作期間と遅延リスク
現実的なスケジュール
| フェーズ | 10Pサイトの場合 | 遅延要因 | 遅延時の影響 |
|---|---|---|---|
| 要件定義 | 2週間 | 決定権者不在 | 全体が遅れる |
| デザイン | 3週間 | 修正の繰り返し | 2-4週間遅延 |
| 実装 | 3週間 | 仕様変更 | 1-2週間遅延 |
| コンテンツ | 2週間 | 原稿遅れ | 最大の遅延要因 |
| テスト | 1週間 | バグ修正 | 1週間遅延 |
| 公開作業 | 3日 | DNS浸透 | 1-2日遅延 |
合計:11週間(約3ヶ月)
遅延した場合の追加費用
【遅延責任と追加費用】
発注者側の責任:
・原稿提出遅れ → 追加費用なし(but 納期延長)
・仕様変更 → 変更規模により10-50万円
・確認遅れ → スケジュール再調整費 3-5万円
制作会社側の責任:
・技術的問題 → 追加費用なし
・人員不足 → 損害賠償の可能性
・品質不良 → 無償修正
6. 契約書で必ず確認すべき条項
プロが見るチェックポイント
🔍 契約書の必須確認項目
【納期・検収】
・納期遅延時のペナルティ
・検収期間と検収基準
・瑕疵担保期間(最低3ヶ月)
【費用・支払い】
・支払いタイミング(着手金・中間金・納品時)
・追加費用の事前承認ルール
・見積もり有効期限
【知的財産権】
・著作権の帰属先
・第三者の権利侵害時の責任
・制作会社の実績掲載可否
【保守・サポート】
・無償サポート期間
・保守契約への移行条件
・緊急時の対応体制
【解約・紛争】
・中途解約の条件
・損害賠償の上限
・紛争時の解決方法
危険な契約条項の実例
実際にあった問題条項:
-
「完成の定義は弊社基準による」 → 永遠に完成しない可能性
-
「追加作業は都度見積もり(上限なし)」 → 青天井の追加費用
-
「検収がない場合、自動的に完了とする」 → 不具合があっても責任なし
-
「他社による改修を行った場合、保証対象外」 → 永続的な依存関係
まとめ:賢い発注のための防衛策
見積もり段階での必須アクション
-
相見積もりは内訳で比較
- 総額だけでなく各項目を比較
- 含まれない項目を洗い出し
-
想定される追加費用をすべて聞く
- 「これ以外に費用は発生しませんか?」
- 書面で回答をもらう
-
支払い条件の交渉
- 着手金30%、中間30%、納品後40%が理想
- 完成前の全額支払いは避ける
-
契約書は専門家チェック
- 弁護士 or 経験者に確認依頼
- 1-3万円の投資で数百万円のリスク回避
-
エスクローサービスの検討
- 大型案件では第三者預託も選択肢
- トラブル時の保険として
最終確認チェックリスト
・見積もりに「一式」が3個以上ない
・修正回数が5回以上含まれている
・著作権譲渡が明記されている
・納期遅延ペナルティが双方にある
・瑕疵担保期間が3ヶ月以上
・支払いが分割になっている
・キャンセルポリシーが明確
7項目中5項目以上クリアで契約GO
「安い」「早い」「何でもできる」という甘い言葉に惑わされず、リスクを正直に説明してくれる会社を選びましょう。多少高くても、透明性の高い見積もりの方が、最終的には安く済みます。
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