機能の必須条件リストを作る方法

「ECサイトを作りたい」「会員機能が欲しい」という漠然とした要望では、制作会社も予算と目的に合わせた提案ができません。機能要件を「必須」「希望」「将来対応」に分類し、優先順位をつける方法を解説します。

なぜ機能要件の整理が重要なのか

予算オーバーを防ぐ

すべての要望を実装しようとすると、簡単に予算の2〜3倍になります。「nice to have」と「must have」を区別することで、予算内で最大の効果を得られます。

スケジュール遅延を防ぐ

機能が増えれば開発期間も比例して長くなります。必須機能に絞ることで、予定通りの公開が可能になります。

後からの追加を防ぐ

「やっぱりこの機能も...」という後出しは、追加費用と遅延の原因。最初に整理しておくことで、スムーズな進行が可能です。

機能要件を3つのレベルに分類する

レベル1:必須機能(Must Have)

これがないとサイトの目的が達成できない機能

判断基準:

  • この機能がないと業務が回らない
  • 法的に必要(個人情報保護、特商法表記等)
  • 競合他社がすべて実装している基本機能

例:

  • お問い合わせフォーム(BtoB企業サイト)
  • カート機能(ECサイト)
  • SSL対応(すべてのサイト)
  • スマートフォン対応(すべてのサイト)

レベル2:希望機能(Nice to Have)

あれば便利だが、なくても目的は達成できる機能

判断基準:

  • 効率は上がるが、手動でも対応可能
  • ユーザー体験は向上するが、必須ではない
  • 予算に余裕があれば実装したい

例:

  • 会員ログイン機能(情報提供サイト)
  • お気に入り登録機能
  • SNS連携機能
  • チャット機能

レベル3:将来対応(Future)

今回は見送り、次期フェーズで検討する機能

判断基準:

  • 現時点では需要が不明確
  • 実装コストが高すぎる
  • 運用体制が整っていない

例:

  • AI チャットボット
  • 多言語対応
  • AR/VR機能
  • 高度な分析機能

業種別・目的別の必須機能チェックリスト

コーポレートサイト

必須機能:

  • ✔︎ 会社概要ページ
  • ✔︎ サービス・製品紹介
  • ✔︎ お問い合わせフォーム
  • ✔︎ ニュース・お知らせ機能
  • ✔︎ プライバシーポリシー
  • ✔︎ SSL対応
  • ✔︎ スマホ対応

よくある希望機能:

  • ✔︎ 採用情報ページ
  • ✔︎ IR情報ページ
  • ✔︎ 多言語対応
  • ✔︎ 社員ブログ

ECサイト

必須機能:

  • ✔︎ 商品カタログ
  • ✔︎ カート機能
  • ✔︎ 決済機能
  • ✔︎ 会員登録・ログイン
  • ✔︎ 注文管理
  • ✔︎ 在庫管理連携
  • ✔︎ 特定商取引法表記
  • ✔︎ SSL対応

よくある希望機能:

  • ✔︎ レコメンド機能
  • ✔︎ レビュー機能
  • ✔︎ ポイント機能
  • ✔︎ クーポン機能
  • ✔︎ 定期購入機能

サービスサイト(SaaS等)

必須機能:

  • ✔︎ サービス説明
  • ✔︎ 料金プラン表示
  • ✔︎ 無料トライアル申込
  • ✔︎ ログイン機能
  • ✔︎ FAQ
  • ✔︎ 利用規約
  • ✔︎ お問い合わせフォーム

よくある希望機能:

  • ✔︎ 料金シミュレーター
  • ✔︎ 事例紹介
  • ✔︎ ウェビナー申込
  • ✔︎ 資料ダウンロード(要個人情報)

メディアサイト

必須機能:

  • ✔︎ 記事投稿・管理機能
  • ✔︎ カテゴリー分類
  • ✔︎ 検索機能
  • ✔︎ SNSシェアボタン
  • ✔︎ 関連記事表示
  • ✔︎ 著者プロフィール

よくある希望機能:

  • ✔︎ 会員限定記事
  • ✔︎ コメント機能
  • ✔︎ いいね機能
  • ✔︎ メルマガ連携

機能の優先順位を決める4つの評価軸

1. ビジネスインパクト(重要度:高)

その機能により、どれだけ売上や問い合わせが増えるか?

評価方法:

  • 売上への直接的な影響度を5段階評価
  • KPI達成への貢献度を数値化
  • 競合優位性への影響を評価

2. 実装コスト(重要度:高)

開発にかかる費用と時間はどれくらいか?

評価方法:

  • 概算見積もりを取得
  • 開発期間の見積もり
  • 運用コストも含めて算出

3. 技術的難易度(重要度:中)

実装の複雑さやリスクはどの程度か?

評価方法:

  • 標準機能か、カスタム開発か
  • 外部システムとの連携有無
  • セキュリティ要件の高さ

4. 運用負荷(重要度:中)

公開後の運用・メンテナンスの手間は?

評価方法:

  • 更新頻度の想定
  • 必要な人員・スキル
  • トラブル対応の複雑さ

機能要件リストの作成手順

ステップ1:ブレインストーミング

関係者全員で「あったらいいな」をすべて出し切る。この段階では実現可能性は考えない。

ステップ2:グルーピング

似た機能をまとめ、カテゴリー分けする。

  • 基本機能
  • コンテンツ管理
  • ユーザー管理
  • マーケティング機能
  • 分析機能

ステップ3:評価と点数付け

各機能を4つの評価軸で点数化(各5点満点)。

ステップ4:優先順位の決定

合計点数と予算を照らし合わせ、実装する機能を決定。

ステップ5:段階的実装計画

Phase1(初回リリース)、Phase2(3ヶ月後)、Phase3(1年後)に分けて計画。

機能要件リストのテンプレート

【機能要件リスト】

機能名:お問い合わせフォーム
カテゴリー:基本機能
優先度:必須
概要:顧客からの問い合わせを受け付ける
詳細要件:
- 必須項目:会社名、氏名、メール、問い合わせ内容
- 自動返信メール機能
- 管理画面での問い合わせ管理
- スパム対策(reCAPTCHA)
想定コスト:20万円
開発期間:1週間
備考:個人情報保護方針へのリンク必須

よくある失敗パターンと対策

失敗1:「全部必須」病

問題:すべての機能を必須にしてしまう 対策:「なくても3ヶ月は業務が回るか?」を判断基準に

失敗2:技術ありきの要件定義

問題:「AIを使って何かしたい」など手段が目的化 対策:まず課題を明確にし、解決手段は制作会社と相談

失敗3:運用を考えない機能追加

問題:更新が大変な機能を入れてしまう 対策:「誰が・いつ・どうやって更新するか」を明確に

まとめ:段階的な成長を前提に

すべてを最初から完璧にする必要はありません。まずは必須機能で公開し、運用しながら必要な機能を追加していく「グロースハック」の考え方が重要です。

機能要件リストを作成することで得られるメリットは以下のとおりです。

  • 制作会社から的確な提案を受けられる
  • 予算内で最大の効果を得られる
  • スケジュール通りに公開できる
  • 将来の拡張計画も明確になる

「あれもこれも」ではなく「まずはこれ」を明確にすることが、Web制作成功の鍵となります。

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