社内承認フローを整えてから発注するべき理由
「社長の一声で全部やり直し」「部署間で意見が対立して進まない」こんな経験はありませんか?実は、Web制作の失敗の半数以上は、社内の承認フローの問題に起因しています。発注前に承認体制を整える重要性と具体的な方法を解説します。
承認フローが未整備だと起こる悲劇
実例1:180度の方向転換
状況:
デザイン完成直前に社長が初めて確認
↓
「イメージと全然違う!」
↓
結果:
- 2ヶ月の作業が無駄に
- 追加費用300万円
- 納期3ヶ月遅延
- 制作会社との関係悪化
実例2:決まらない仕様
状況:
5つの部署が各自の要望を主張
↓
誰も決定権を持たない
↓
結果:
- 会議を10回実施
- 4ヶ月経っても仕様未確定
- 制作会社が辞退
- プロジェクト中止
実例3:承認の玉突き事故
状況:
担当 → 課長 → 部長 → 役員 → 社長
↓
各段階で修正指示
↓
結果:
- 承認に2ヶ月
- 矛盾する指示の連続
- 最終的に原案に戻る
なぜ発注前に承認フローが必要なのか
1. 時間の無駄を防ぐ
承認フローなし:
作業 → 確認待ち(2週間) → 修正 → 確認待ち(2週間)
→ 再修正 → 確認待ち...
承認フローあり:
作業 → 即日確認 → 微修正 → 承認(3日以内)
2. コストの増大を防ぐ
手戻りコストの実態:
デザイン段階での変更:10万円
開発段階での変更:50万円
公開直前での変更:100万円
3. 品質の低下を防ぐ
- 急ぎの修正による品質低下
- 一貫性の欠如
- モチベーション低下による手抜き
4. 関係性の悪化を防ぐ
- 制作会社の信頼失墜
- 社内の対立
- プロジェクトの空中分解
理想的な承認フローの設計
基本構造:3層構造
【決定層】
役割:最終決定
メンバー:役員1名
権限:すべて
【承認層】
役割:実質的な承認
メンバー:部長級2-3名
権限:仕様・デザイン承認
【実行層】
役割:実務推進
メンバー:担当者2-3名
権限:日常的な判断
承認ポイントの明確化
【必須承認ポイント】
1. 要件定義完了時
2. デザインコンセプト決定時
3. デザイン最終確定時
4. テストサイト確認時
5. 本番公開前
【承認不要な項目】
- 文言の微修正
- 画像の差し替え
- 色の微調整(ブランドカラー以外)
承認フロー構築の5ステップ
Step1:ステークホルダーの洗い出し
【関係者マッピング】
決定権者:社長、役員
承認者:各部門長
実行者:マーケ、広報、IT
関係者:営業、CS、人事
Step2:役割と権限の定義
【役割定義書】
プロジェクトオーナー(役員)
- 最終決定権
- 予算承認
- 重大な方向転換
プロジェクトマネージャー(部長)
- 実務的な承認
- スケジュール管理
- 制作会社との調整
プロジェクトメンバー(担当)
- 日常的な確認
- 資料準備
- 進捗管理
Step3:承認基準の明文化
【承認基準】
即承認:
・要件定義書と合致
・ブランドガイドライン準拠
・予算内
・スケジュール通り
要検討:
・仕様変更を伴う
・追加費用が発生
・納期に影響
却下:
・目的から逸脱
・予算大幅超過
・技術的に不可能
Step4:タイムリミットの設定
【承認期限ルール】
通常承認:3営業日以内
緊急承認:24時間以内
軽微な確認:即日
期限超過時:
- 自動承認とみなす
- エスカレーション
- 代理承認者が判断
Step5:コミュニケーションルールの設定
【情報共有ルール】
定例報告:週1回(月曜)
承認依頼:メール+Slack
緊急連絡:電話+メール
議事録:24時間以内に共有
組織規模別の承認フロー例
小規模企業(〜30名)
シンプル2階層:
社長(最終決定)
↓
担当者(実務全般)
ポイント:
- 社長の時間を最初に確保
- 大枠は社長、詳細は担当者
中規模企業(30〜300名)
標準3階層:
役員(最終承認)
↓
部長(実質承認)
↓
担当(実行・確認)
ポイント:
- 部長に権限委譲
- 役員は要所のみ
大企業(300名〜)
委員会方式:
ステアリングコミッティ(月1回)
↓
プロジェクト委員会(週1回)
↓
ワーキンググループ(日次)
ポイント:
- 階層を最小限に
- 横断的な委員会
承認フローを機能させる10の工夫
1. キックオフで全員集合
最初に全員の認識を合わせる
2. 決定事項の見える化
決定ログを作成し共有
3. 手戻り防止の段階承認
小さく承認を積み重ねる
4. 承認者の教育
Web制作の基礎を理解してもらう
5. 代理承認者の設置
不在時の対応を明確に
6. 承認用ツールの活用
ワークフローシステムの導入
7. テンプレート化
承認資料のフォーマット統一
8. 事前レビューの実施
正式承認前の根回し
9. 優先順位の明確化
すべてを同じ重要度にしない
10. 振り返りと改善
プロジェクト後の見直し
承認フローのドキュメント化
承認フロー図の作成
[担当者] → (資料作成) → [課長] → (事前確認)
↓
[部長] ← (承認依頼) ← [課長]
↓
(最終承認) → [役員]
承認マトリックスの作成
| 項目 | 担当者 | 課長 | 部長 | 役員 |
|---|---|---|---|---|
| 要件定義 | 作成 | 確認 | 承認 | 報告 |
| デザイン | 確認 | 確認 | 承認 | 承認 |
| 軽微な修正 | 承認 | 報告 | - | - |
| 追加費用 | 確認 | 確認 | 承認 | 承認 |
よくある問題と対策
問題1:全員が口を出す
対策:
- 意見を言える人を限定
- フェーズごとに関与者を変える
- 最終決定者を明確にする
問題2:承認が遅い
対策:
- 期限を設定
- リマインドの自動化
- 承認専用の時間を確保
問題3:後から覆る
対策:
- 段階承認で確定させる
- 変更にはペナルティ
- 議事録で証跡を残す
制作会社に伝えるべきこと
契約前に共有
必ず伝える情報:
・承認フロー図
・各承認者の役割
・承認にかかる標準日数
・緊急時の連絡先
・承認遅延時の取り扱い
リスク共有
「弊社の承認には通常3日かかります」
「役員承認は月2回の会議です」
「部署間調整に時間がかかる可能性があります」
承認フローチェックリスト
発注前の最終確認
- プロジェクトオーナーは決まったか
- 承認者全員の合意は取れたか
- 承認基準は明文化されたか
- タイムリミットは設定されたか
- 代理承認者は決まったか
- フロー図は作成されたか
- 制作会社に共有したか
- リスクは共有されたか
まとめ:承認フローは成功への投資
承認フローの整備は、一見面倒な作業に見えますが、実はコスト削減と品質向上への最も確実な投資です。
整備による効果:
- 制作期間:30%短縮
- 追加コスト:50%削減
- 品質満足度:40%向上
- 関係性:良好に維持
最重要ポイント: 発注前に承認フローを整えることは、制作会社への礼儀であり、プロジェクト成功への責任です。
「とりあえず始めてから考える」ではなく、「準備万端で始める」。この違いが、成功と失敗を分けます。今すぐ承認フローの整備を始めましょう。
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