戦略・設計フェーズで行うこと全部見せます
「デザインはまだですか?」と急かしたくなる気持ちは分かります。しかし、戦略・設計フェーズを疎かにすると、後で必ず大きな手戻りが起こります。このフェーズでは制作会社がプロジェクトの基盤となる重要な作業を実施します。制作現場の裏側を詳しく解説します。
戦略・設計フェーズの位置づけと重要性
戦略・設計フェーズは、建築で言えば「設計図」を作る段階です。ここでの精度が、最終的な品質とコストを大きく左右します。
このフェーズで決まること
- サイトの基本構造(サイトマップ)
- 各ページのレイアウト(ワイヤーフレーム)
- ユーザーの動線(導線設計)
- 必要な機能と仕様(機能要件定義)
- コンテンツの方向性(コンテンツ戦略)
フェーズ全体の流れ(2〜3週間)
Week 1:現状分析と戦略立案
- 現状把握と課題整理
- 競合分析
- ターゲット分析
- 戦略立案
Week 2:情報設計
- サイトマップ作成
- ワイヤーフレーム作成
- 導線設計
Week 3:詳細設計
- 機能要件定義
- コンテンツ設計
- 技術仕様策定
各工程の詳細解説
1. 現状分析(3〜4日)
制作会社が行うこと:
既存サイト分析(ある場合):
- アクセス解析データの分析
- ヒートマップ分析
- ユーザビリティ課題の抽出
- コンテンツの棚卸し
ビジネス分析:
- ビジネスモデルの理解
- 商品・サービスの特徴整理
- 営業プロセスの把握
- 顧客の購買プロセス分析
発注者が確認すること:
- 分析結果が実態と合っているか
- 重要な課題が漏れていないか
- ビジネスの理解に誤りがないか
2. 競合分析(2〜3日)
制作会社が行うこと:
競合サイト調査:
- 直接競合3〜5社の分析
- サイト構成の比較
- デザイントレンドの把握
- 機能面の比較
ベンチマーク分析:
- 業界のベストプラクティス
- 他業界の参考事例
- 最新のWebトレンド
分析レポートの例:
競合A社:
- 強み:商品検索が使いやすい
- 弱み:スマホ対応が不十分
- 参考点:FAQの充実度
競合B社:
- 強み:ビジュアル訴求力
- 弱み:情報が探しにくい
- 参考点:動画の活用方法
発注者が確認すること:
- 競合の選定が適切か
- 自社の強みが正しく理解されているか
- 差別化ポイントが明確か
3. ターゲット分析(2〜3日)
制作会社が行うこと:
ペルソナ作成:
- 主要ターゲット2〜3パターン
- 年齢、性別、職業、年収
- 価値観、ライフスタイル
- Web利用シーン
カスタマージャーニー作成:
- 認知から購買までの流れ
- 各段階での心理状態
- 必要な情報とコンテンツ
- タッチポイントの整理
ペルソナ例:
ペルソナ1:田中部長(45歳)
- 中小企業の営業部長
- 効率化ツールを探している
- 稟議を通すための資料が必要
- スマホでサクッと情報収集
発注者が確認すること:
- ペルソナが実際の顧客と合致しているか
- 重要な顧客層が漏れていないか
- 顧客の課題認識が正しいか
4. 戦略立案(1〜2日)
制作会社が行うこと:
サイトコンセプト策定:
- サイトの役割定義
- 提供価値の明確化
- ブランドメッセージ
- トーン&マナー設定
KPI設定:
- 目標数値の設定
- 測定方法の決定
- 改善サイクルの設計
戦略ドキュメント例:
コンセプト:「専門知識を分かりやすく」
役割:見込み客の教育と信頼構築
KPI:
- 月間リード獲得数:50件
- 資料ダウンロード数:200件
- 平均滞在時間:3分以上
発注者が確認すること:
- 戦略が経営方針と合致しているか
- KPIが現実的か
- 測定可能な指標になっているか
5. サイトマップ作成(2〜3日)
制作会社が行うこと:
情報の整理と分類:
- コンテンツのグルーピング
- 階層構造の設計
- メニュー構成の決定
- URL構造の設計
ページリストの作成:
- 全ページの洗い出し
- 優先順位付け
- 公開フェーズの分け方
サイトマップ例:
トップページ
├─ 会社情報
│ ├─ 会社概要
│ ├─ 代表メッセージ
│ └─ アクセス
├─ サービス
│ ├─ サービスA
│ ├─ サービスB
│ └─ 料金プラン
└─ お問い合わせ
発注者が確認すること:
- 必要なページが網羅されているか
- ユーザーが迷わない構造か
- 運用時の更新がしやすいか
6. ワイヤーフレーム作成(3〜4日)
制作会社が行うこと:
主要ページの設計:
- レイアウト設計
- 要素の配置
- 情報の優先順位付け
- 機能の配置
画面設計書の作成:
- 各要素の説明
- 動作仕様の記載
- レスポンシブ対応方針
発注者が確認すること:
- 重要な情報が目立つ位置にあるか
- ユーザーの行動を促す設計になっているか
- 必要な機能が含まれているか
7. 導線設計(2日)
制作会社が行うこと:
ユーザーフロー設計:
- 主要な導線パターン
- コンバージョンまでの経路
- 離脱ポイントの対策
内部リンク設計:
- 関連ページへの誘導
- パンくずリストの設計
- CTAボタンの配置
導線設計例:
トップ → サービス詳細 → 事例 → 問い合わせ
↓
料金ページ → 問い合わせ
発注者が確認すること:
- 主要な導線が考慮されているか
- 離脱を防ぐ工夫があるか
- ゴールまでの経路が明確か
8. 機能要件定義(2〜3日)
制作会社が行うこと:
機能の詳細仕様策定:
- 入力項目の定義
- バリデーションルール
- エラー処理
- 確認画面の仕様
システム連携の確認:
- 外部システムとの連携
- API仕様の確認
- データの受け渡し方法
発注者が確認すること:
- 業務フローと合致しているか
- セキュリティ要件を満たしているか
- 運用負荷が適切か
成果物チェックリスト
戦略・設計フェーズで受け取るべき成果物:
- 現状分析レポート
- 競合分析レポート
- ペルソナシート
- カスタマージャーニーマップ
- サイトコンセプト定義書
- サイトマップ
- ワイヤーフレーム(主要ページ)
- 画面設計書
- 機能要件定義書
- 導線設計図
よくある落とし穴と対策
落とし穴1:「とりあえずデザインを見たい」
問題:設計を飛ばしていきなりデザインに入る 結果:後で大幅な手戻りが発生 対策:設計の重要性を理解し、順序を守る
落とし穴2:ワイヤーフレームをデザインと勘違い
問題:「地味」「かっこ悪い」と判断する 結果:本質的な議論ができない 対策:ワイヤーは「設計図」と理解する
落とし穴3:全員の意見を反映しようとする
問題:収拾がつかなくなる 結果:焦点がぼやけたサイトになる 対策:ターゲットユーザーを軸に判断
まとめ:急がば回れの精神で
戦略・設計フェーズは地味で時間がかかりますが、ここでの精度がプロジェクト全体の品質を決定づけます。
重要なポイント:
- 現状と課題を正確に把握する
- ターゲットを明確に定義する
- 構造を論理的に設計する
- 成果物をしっかり確認する
- 修正は今のうちに行う
このフェーズでしっかり時間をかけることで、後のデザイン・開発フェーズがスムーズに進み、最終的には時間もコストも節約できます。「急がば回れ」の精神で、じっくり取り組むことが成功への近道です。
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