コンペで制作会社を選んではいけない理由
「公平に選ぶためにコンペにしよう」多くの企業がこう考えます。しかし、Web制作においてコンペ形式は、発注者・制作会社双方にとってデメリットが大きい選定方法です。なぜコンペを避けるべきか、その理由と代替案を詳しく解説します。
コンペの3つの大きな問題
1. 表面的な提案になりがち
なぜ表面的になるのか:
コンペでは限られた情報と時間で提案を作成するため:
- ヒアリングが不十分(1〜2時間程度)
- 企業の深い理解ができない
- 一般論的な提案になる
- 見栄えだけを重視した提案
実例:
コンペ提案:「御社のブランド価値を高めるサイト」
本来必要:「営業効率を改善するリード獲得サイト」
→ 根本的なニーズとズレた提案に
2. 優秀な制作会社が参加しない
参加を避ける理由:
実力のある制作会社ほどコンペを嫌います。
- 無償の提案コストが高い
- 採択率が低い(通常20〜30%)
- 既存顧客を優先
- 価格競争になりやすい
制作会社の本音: 「コンペに5社参加なら、勝率20%。5回に1回しか受注できないなら、その分のコストが価格に反映される」
3. 選定基準が曖昧になる
よくある選定の失敗:
- プレゼンが上手い会社が勝つ
- デザインの好みで決まる
- 価格の安さで決まる
- 実力とは別の要素で決まる
結果として:
- プレゼン専門の営業担当が担当
- 実際の制作チームは別
- 期待とのギャップが生まれる
コンペで失敗する5つのパターン
パターン1:「とりあえずコンペ」
状況: 要件が曖昧なままコンペ実施
結果:
- 各社バラバラな提案
- 比較ができない
- 結局やり直し
対策: 要件を固めてから依頼
パターン2:「数打てば当たる」
状況: 10社以上に声をかける
結果:
- 対応が雑になる
- 優秀な会社は辞退
- 選定に時間がかかりすぎる
対策: 3〜5社に絞る
パターン3:「デザインコンペ」
状況: 実際のデザインを作らせる
結果:
- 表面的なデザインで判断
- 戦略性が考慮されない
- 修正が大量発生
対策: コンセプトとプロセスで判断
パターン4:「価格比較コンペ」
状況: 同じ仕様書で価格だけ比較
結果:
- 安かろう悪かろう
- 後から追加費用
- 品質問題が発生
対策: 価値と価格のバランスで判断
パターン5:「形式的コンペ」
状況: 決定済みだが形式上実施
結果:
- 他社の時間を無駄にする
- 業界での評判低下
- 良い会社と縁が切れる
対策: transparent(透明性のある)な選定
コンペに代わる選定方法
方法1:段階的選定プロセス
Step 1:書類選考(10社→5社)
- 実績資料で判断
- 基本的な要件の確認
- 予算レンジの確認
Step 2:ヒアリング(5社→3社)
- 各社1.5時間の面談
- 考え方や進め方を確認
- 相性を判断
Step 3:簡易提案(3社→1社)
- 方向性の提案(有償も検討)
- 概算見積もり
- 体制とスケジュール
メリット:
- 段階的に深く理解できる
- 制作会社の負担も適正
- より精度の高い選定が可能
方法2:トライアル発注
小さく始める:
Phase 1:LPページ制作(50万円)
↓ 評価
Phase 2:メインサイト構築(300万円)
↓ 評価
Phase 3:継続的な改善契約
メリット:
- 実際の実力が分かる
- リスクが小さい
- 関係性を構築できる
方法3:提案依頼書(RFP)による選定
RFPを作成して:
- 要件を明確化
- 3社程度に提案依頼
- 提案内容で選定
メリット:
- 要件が明確
- 比較しやすい
- 制作会社も提案しやすい
それでもコンペをする場合の改善策
最低限守るべきルール
1. 参加社数を限定(3〜5社)
- 質の高い提案を期待できる
- 各社としっかり対話できる
2. 十分な情報提供
- 詳細な要件書
- 質疑応答の機会
- 現状の課題共有
3. 十分な準備期間(2〜3週間)
- 急がせない
- 質問期間を設ける
4. 提案料の支払いを検討
- 5〜10万円程度
- 質の高い提案が期待できる
- プロとしてのリスペクト
5. 明確な選定基準の公開
選定基準例:
- 提案内容:40%
- 実績・体制:30%
- 価格:20%
- プレゼン:10%
フィードバックの重要性
落選企業への配慮:
- 選定理由を伝える
- 良かった点も伝える
- 今後の機会を残す
フィードバック例:
「提案内容は素晴らしかったが、
今回は○○の実績を重視した。
次回△△の案件では是非お願いしたい」
コンペ以外で重視すべき選定基準
1. プロセスの明確さ
確認ポイント:
- 制作フローが明確か
- 各工程での成果物は何か
- 承認プロセスはどうか
2. コミュニケーション力
確認ポイント:
- レスポンスの速さ
- 説明の分かりやすさ
- 質問の的確さ
3. 提案の本質性
確認ポイント:
- 課題を理解しているか
- 解決策が具体的か
- 実現可能性があるか
4. 体制の安定性
確認ポイント:
- チーム体制
- バックアップ体制
- 継続性
5. 相性・信頼関係
確認ポイント:
- 価値観の一致
- 長期的な視点
- 誠実さ
業界別・規模別の最適な選定方法
大企業の場合
推奨:段階的選定+一部有償提案
- 社内説明のための資料が必要
- 複数部署の合意形成
- リスク最小化
中小企業の場合
推奨:RFP+面談重視
- スピード重視
- 相性重視
- コスト意識
スタートアップの場合
推奨:トライアル発注
- アジャイル的アプローチ
- 小さく始めて大きく育てる
- パートナーシップ重視
まとめ:本質的な選定を
コンペは一見公平ですが、実は最も不公平な選定方法かもしれません。
コンペを避けるべき理由:
- 表面的な提案になる
- 優秀な会社が参加しない
- 選定基準が曖昧になる
- 時間とコストの無駄
- 信頼関係が築きにくい
代わりに重視すべきこと:
- 対話を通じた相互理解
- 段階的な選定プロセス
- 小さく始めて評価する
- プロセスと体制の確認
- 長期的な関係構築
Web制作は「モノを買う」のではなく「パートナーを選ぶ」こと。コンペという「審査」ではなく、「対話」を通じて最適なパートナーを見つけることが、プロジェクト成功への第一歩です。
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